かかりつけの歯医者さんって必要ですか? -シニア世代編-
歯の本数が気になり始めたら見直したい「オーラルフレイル」対策
硬いものが噛みにくくなった、歯の本数が少しずつ減ってきた——そんな小さな変化は、お口全体の働きが衰える「オーラルフレイル」のサインかもしれません。早めに気づいて対策すれば、5年、10年と元気に過ごしやすくなします。
「歯を失うこと」は口だけの問題ではありません
「オーラルフレイル」とは、噛む・飲み込む・話すといった口の働きがゆるやかに低下していく状態を指す言葉です。日本歯科医師会によると、この状態は健康な状態と機能障害のあいだにあり、早めに気づいて対応することで、より健康な状態へ戻りやすいという特徴があるとされています。
次のような変化に、心当たりはありませんか。
- 滑舌が悪くなったと感じる
- 食事の際にむせやすくなった
- 硬い食品を避けるようになった
- 口の中が乾きやすい
- 気づくと歯の本数が減っている
上記の症状ひとつひとつは些細に思えるかもしれませんが、放置すると次第に積み重なっていき日々の生活に支障が出てきます。
歯の本数の減少が、体全体に及ぼす影響
年齢や持病などの条件をそろえたうえで比較したところ、オーラルフレイルに該当する方はそうでない方に比べて次のリスクが高まっていました。
- 身体的な衰え(フレイル)の発生:約2.4倍
- 筋力の低下(サルコペニア)の発生:約2.1倍
- 要介護認定を受けるリスク:約2.4倍
- 死亡リスク:約2.1倍
サルコペニアとは筋肉量が減少し筋力や身体機能が低下する状態を指し、要介護状態の手前(虚弱)に位置づけられます。サルコペニアはフレイルの大きな引き金になりやすいため、この状態になる前に食い止めることが大切です。つまり、歯を失うことや噛む力の低下は単なる「お口の中の出来事」にとどまらず、全身の健康や暮らしの質にまで関わってくることが、こうしたデータから見えてきます。

歯の本数が気になってきたときにできること
ご自宅でできるセルフケア
- 舌や口まわりを動かす体操を、毎日の習慣に取り入れる
- ひと口ごとに、意識してよく噛んで食べる
- 家族や友人との会話の時間を大切にする
- こまめな水分補給で、口の乾燥を防ぐ
- 毎日の歯みがきに加えて、歯間ブラシ・糸ようじ等を取り入れる
歯科医院でできる口腔機能管理
セルフケアだけでは気づきにくい変化もあるため、定期的に歯科医院でチェックを受けることも大切です。令和8年9月現在、保険診療でこれれのオーラルフレイル検査及び予防のための治療も可能となりました。当院では、噛む力や舌の動きなどを確認しながら、お一人おひとりの状態に合わせたケアをご提案しています。
何も自覚がないからこそ油断せずに、定期的な受診で大病の芽を潰すことが大切です。
まとめ:歯の本数は、体からの大切なサイン
歯の本数や噛む力の変化は、体全体の元気度を映す鏡のようなものです。「年齢のせいだから仕方ない」とあきらめず、気づいたときが対策を始める良いタイミングです。ご自身のペースで、できることから少しずつ取り入れてみてください。
よくある質問
Q. 歯が何本あれば安心なのでしょうか。
A. 厚生労働省の調査では「80歳で20本以上」が一つの目安とされていますが、本数だけでなく噛む力や飲み込む力全体のバランスも大切です。20本以上の歯があっても食事に使うの筋肉が不足されている方もおられます。気になる場合は、歯科医院でのチェックをおすすめします。
Q. 入れ歯を使っていても、オーラルフレイル対策はできますか。
A. 入れ歯の合い具合を定期的に確認しながら、舌や口まわりの体操、よく噛む習慣などを続けることで、口の機能を保ちやすくなります。
Q. オーラルフレイルは一度なると戻れないのでしょうか。
A. オーラルフレイルは、健康な状態と機能低下のあいだにある、比較的早い段階の状態とされています。気づいた時点で対策を始めれば、改善が期待できるケースも少なくありません。
Q. どのくらいの頻度で歯科医院を受診すればよいですか。
A. 症状がなくても、3か月〜半年に一度は定期的なチェックを受けることをおすすめします。歯や歯ぐきの状態に合わせて、通いやすいペースをご相談ください。
出典:
- 日本歯科医師会「オーラルフレイルについて」
- 公益財団法人長寿科学振興財団「オーラルフレイルの概念とフレイルとの関係」
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29161342/